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届かなかった理想、それでも残った熱――押切蓮介 映画『サユリ』がくれた問い

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『ハイスコアガール』では少年の頃の思い出を、

『ミスミソウ』では心の痛みや執念をひとつの“歪な優しさ”として描いてきた押切蓮介さん。

そんな彼が、自らの代表作のひとつ『サユリ』の実写映画化をめぐって「原作者としての葛藤」を明かしています。

 

原作者としての孤独と、出資という決断

押切さんはこれまで、作品がアニメやドラマになるたびに「ありがたい」「だいたいうまくいっている」と語ってきました。
ただ、その裏には、どこか“蚊帳の外”に置かれているような感覚もあったといいます。

「原作者って、実は一番仕事をしていないんですよね」

そんな思いが積み重なった結果、『サユリ』の実写化では一歩踏み込み、自ら製作費の一部を出資。製作委員会の一員となる道を選びました。

作品をただ“見送る”のではなく、“一緒に作る”側へと回る。その決断には、自分の作品を最後まで見届けたいという純粋な執念がありました。

しかし、いざ蓋を開けてみると、現実は思い描いた理想とは違っていました。
会議に出ても発言が反映されるわけではなく、最終的な判断は制作サイドに委ねられることが多かったといいます。

「原作者でありながら、やっぱり手の届かない場所がある」

——その距離の遠さを痛感した経験でした。

 

映画『サユリ』が描いた“別の恐怖”

原作の『サユリ』は、無邪気にして残酷な少女の幽霊・サユリが、
人間たちの身勝手さを跳ね返すように暴れまわるホラー・エンターテインメント。

しかし物語は中盤から大きな転換を迎え、それが見どころとなっています。

“悪霊をぶちのめす快感”と、“因果応報のカタルシス”が同居する物語です。

 

しかし映画版では、そのテイストが大きく変化しました。
サユリという存在が生まれる背景——家庭の崩壊、親による虐待、無関心に傷つけ合う社会——へと焦点を移したことで、
物語は「心霊アクション」から「悲劇の連鎖を描く人間ドラマ」へと姿を変えていきました。

原作でももちろんそのようなシーンは描かれていましたが、
あくまで主人公たちの戦いの理由付け程度の存在でした。

押切さんは「ネグレクトや児童虐待をテーマに描いたわけじゃない」と語っています。

原作とは異なる“重たい現実”の側面が強調されたことで、
本来の“怨霊の爽快さ”や“恐怖の笑い”が失われていったという感覚があったのでしょう。

観客の目線で見れば、映画『サユリ』はホラーと社会派ドラマの中間。
血と涙が同じ温度で流れる、不思議な作品になりました。
私自身も本編を観たとき、

「これはホラーなの?それとも人間ドラマ?」

とつい戸惑ってしまったほどです。

 

成功とともに訪れた問い——「面白さって、なんだろう」

それでも映画『サユリ』は、興行的にはヒットしました。

私も実際観てみたら十分面白いし原作の思い切りの良さをしっかり表現できていたように感じました。

「原作よりも深い」「映像が美しい」といった好意的な声も多く、

知らぬ間に押切作品の中でも“完成度の高い実写化”として注目を集めました。

この成功は、押切さんに“矛盾する感情”をもたらしたといいます。
自身の意向が反映されなかった作品が、多くの人に届いている。
嬉しさと悔しさ、納得と混乱が入り混じりながら、やがて彼の中でひとつの問いが生まれました。

——「面白さって、一体なんだろう?」

結果、“自分が納得できなかった作品でも、誰かの心に残るなら、
それもまた正解なのかもしれない”と受け止められるようになったそうです。
そう語る声には、どこか晴れやかな吹っ切れを感じさせます。

 

押切先生の映画では「ミスミソウ」も原作をかなり上手に表現した

名作となっています。かなり残酷ではありますが面白いので是非観てほしい作品です。

 

ちなみに世の中にはこの「サユリ」のようになれなかった

数多くの「実写失敗作」も多くありますが、それはまた別のお話し・・・

 

「反省」ではなく「糧」へ

この経験以降、押切さんは自らアニメや自主映画の監督も務め、映像表現に挑戦するようになりました。
それは「手の届かなかった悔しさ」を、「自分で作ればいい」という原動力に変えたからかもしれません。

原作者であり、出資者であり、そしてひとりの観客でもある——。
『サユリ』をめぐる複雑な旅路は、押切蓮介さんにとって“理想と現実の狭間で生まれた学び”でした。

「面白さとは何か」という問いを抱えながら、彼は今日もまた筆を握る。
たとえ作品の形が変わっても、そこに宿る“作ることへの渇き”だけは、決して揺るがないように思えます。

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